先般の京都市長選挙を経て門川市長3期目に入り、平成28年度~32年度の中期財政収支見通しが当局より発表されております。この中期計画で財政健全化計画が実質後ろ倒しとなり、財政再建が遠のくこととなりました。

先ず、京都市の借金は約2兆1,500億円(H26年決算時)です。京都市の一般会計の規模が7,000~7,500億円であり、税収ベースでは2,500億円前後ですので、予算規模から考えると大きな借金を抱えております。政令指定都市の他都市と比較しても、非常に厳しい財政状況です。

さて、門川市政においては、毎年“黒字決算”となっており財政再建は着実に進んでいるという決算報告がされております。市長選挙でも、成果として大きくアピールされておりました。しかし、この“黒字決算”というのが曲者であり、通常の民間の黒字の感覚とはかけ離れております。それは、借金をしても収入になりますし、貯金を切り崩しても収入になるからです。

例えば、一般家庭で、生活費に35万かかるが、給与は30万円、足りない分をキャッシングで6万円引き出して、1万円手元においてるとします。これを黒字という人はいないと思います。しかし、自治体の定義ではこれが1万円の黒字になります。

京都市は、実質的に赤字状態の中、「特別の財源対策」(詳細は末尾に補足説明してます)を行うことで黒字決算にしています。「特別の財源対策」とは何かと言いますと、「行政改革推進債の発行」と「公債償還基金の取り崩し」です。簡単に言うと、“特例の借金”と“特例の貯金の取り崩し”です。つまり、次世代にツケを先送りして今の会計を黒字にしております。余談ですが、京都党ではツケの先送りとは、要は次世代のお金を勝手に使っているという表現をします。ツケの先送りだと実感が薄く、改善されないからです。子どもや孫の財布からお金をぬいてると思えば、考え方が変わらないでしょうか?

話を元に戻します。「行政改革推進債の発行」と「公債償還基金の取り崩し」は両方とも“特例”であり、本来は自治体としてやってはいけないものなわけです。門川市政においては、「はばたけ未来へ!京プラン」にて、“期間限定”で“特例”に「特別の財源対策」を行う代わりに行政改革をすすめ、建て直しをするということになっておりました。

この「はばたけ未来へ!京プラン」は、本年度(平成28年度)から後期に入ります。前期のプランでは、「特別の財源対策」は毎年100億円程度以内で行うが、前期で脱却の目途をつけ、後期には「早期脱却」するという計画になっておりました。しかし、後期プランに入るにあたり、今回の中期計画が出されたのですが、この「早期脱却」の記載がなくなり、プラン最終年度の平成32年度まで脱却が後ろ倒しにされることになりました。

門川市政では、財政再建は着実に進んでいるので問題ないという答弁に終始しておりますが、現実は前期プラン4年をかけても財政再建の目途がたっていないのが現状です。やはり、以前より指摘している通り、支出の積み上げではなく、収入の範囲内で予算を組むように考え方を変えていかなければいけません。当たり前のことだと思うのですが。

 

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「行政改革推進債の発行」とは、要は地方債の発行です。国債でも地方債でも、建物を建てるなどの大きな出費の負担を分散させる建設債とお金が足りなくなって補てんする赤字債の2種類があります。地方債の発行にはルールがあり、基本的に赤字地方債の発行はできないこととなっています(様々な特例がありますが)。「行政改革推進債の発行」とは、行政改革で財政立て直すため、一時的に赤字地方債を特例で発行しているものです。

「公債償還基金の取り崩し」は、貯金の取り崩しです。政令指定都市では、一般的な元利均等払いや元金均等払いではなく、満期一括払いで借入ができます。満期一括払いですので、返済資金を貯めていかなければならず、条例でルールを定めて貯金をしているのが公債償還基金です。この借金返済の原資を特例で別用途に使うのが「公債償還基金の取り崩し」です。

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