参議院選挙が始まりました。参議院は選挙区が広いこともあり、選挙カーに遭遇することもほとんどありませんので、選挙期間という実感も沸きにくいかもしれません。しかし、民主主義の根幹を支えるのが選挙です。右肩下がりの投票率が少しでも高くなることを願います。

さて、投票率の低下を食い止めるための対応として、2003年に不在者投票の要件が緩和され、期日前投票が身近なものとなりました。期日前投票を利用される有権者の割合は回を重ねるごとに増えており、有権者の利便性に貢献していることは間違いありません。

しかし、これにより選挙期間の意味合いが薄れてしまっている一面もあります。選挙というのは、本来は選挙期間に候補者の訴えを聞いて、投票するという制度です。期日前投票は公示(又は告示)日の翌日から投票が可能な訳ですから、翌日に期日前投票を利用する場合、ほとんど候補者の訴えを聞かずに投票することになる訳です。

一方で、選挙期間中に候補者の訴えを聞くといっても現実の制度がついてきていません。一昔前は、選挙期間に入るとHPの更新すら違反にあたり、地方議員選挙ではビラの配布も禁止されていました。さすがにSNSが登場し、インターネットの更新は出来るようになり、先日の統一地方選挙でビラの配布も解禁されました。しかし、ビラは証紙を貼ったものしか配ってはならず、有権者の数に比べて圧倒的に少ない枚数しか配ることができません。マスコミは国政選挙でも、注目選挙区しか報道しません。選挙期間に候補者の訴えを聞くと言っても形骸化しています。

結果として、候補者は選挙カーを使い、駅前や商業施設の前で街頭演説をして有権者に訴えをすることなります。しかし、当然ずっと同じ場所で街頭演説するわけにもいきませんの移動をします。移動しながらだと一瞬しか耳に入らないので、意味がない上に迷惑と不評な「名前の連呼」をすることになります。

もちろん、立会演説会が連日開催され、候補者の訴えをしっかり聞く場も用意されていますが、立会演説会の開催を有権者に伝えるのは選挙期間に入ってからしか出来ず、事前の広報が出来ないため、後援会を中心に動員せざるを得ず、いわゆる無党派層のように候補者との繋がりがない有権者にアプローチすることは極めて困難です。

投票率が下がり続けているのは、政治不信や有権者意識の低下が主要因なのでしょうが、選挙制度が制度疲労をおこしているのも原因です。ネット投票の解禁は良く言われるところですが、それに加えて、インターネット上での候補者情報を集約するインフラの整備や時代遅れの規制の見直しなど、候補者と有権者のコミュニケーションを少しでも円滑にする制度改正が必要です。