京都市が検討している新税、少し前に「別荘税」と一斉に報道されましたが、実態を踏まえると、正確には「空き家税」です。

検討当初の市外の方を主な課税対象とする「別荘税」とは、実態が大きく異なり、課税対象も京都市民が6割ですので、市民負担も大きく、また、クリアしなければいけない課題も山積であり、慎重な議論が必要です。

空き家税の1つ目の課題は課税根拠。

京都市は、空き家の維持に対する負担を持ち主が十分にしていないことを課税の根拠と説明しています。しかし、固定資産税は、そもそも居住の有無に関わらず、不動産が受けている行政サービスの対価として課税する応益税ですから、二重課税の懸念が強く残ります。

また、仮に固定資産税が二重課税でないとしても問題が残ります。居住している住宅だけを持つ京都市民と居住住宅・空き家を持つ京都市民、ともに住民税を納付しています。後者が住民税の高額納税者であるケースは簡単に想定できますが、その場合、負担が不十分とは思えません。

この点は、納得感の問題もありますが、解消しないと総務省からGOサインがでないため、最大の課題と言えます。

空き家税2つ目の課題は徴税コスト。

空き家税の捕捉は、住民票と固定資産台帳を突合して、住民票のない空き家を特定し、更にそこから、商業利用や賃貸物件、売却予定物件などを除外してきます。この事務に莫大な作業が発生します。
現在の想定では、初期コストがシステム導入に6億円、ランニングコストに年間約2億円と見積もっています。

なお、空き家税の税収見込みは年間8億円~20億円(ちなみに宿泊税は50億円程度)とされています。税額や税率が決まっていないので、かなり幅があります。
想定される課税対象は1.7万件ですから、20億円で計算すると1件当たりの課税は10万円を超え、かなり高額な税金になり現実的ではありません。最小の8億円としても1件あたり5万円にもなります。

8億円の税収に対して、2億円の徴税コストだとすると高過ぎると言わざるを得ません。

空き家税3つ目の課題は、政策目的の実現可能性。

空き家税の政策目的は、空き家を減らすことで、供給住宅を増やし、居住促進による人口流入を増やすことです。しかし、近年は既に空き家は減少傾向だったにも関わらず供給住宅は増えていません。何故なら、減った空き家の跡地はホテル等の宿泊施設が大量に供給されたからです。

空き家税により、空き家減少は実現するかもしれませんが、住宅供給が増えるかは検証が必要です。ホテルが乱立したのは結局、利回りがマンションより良く儲かるからです。例えば、住宅よりコインパーキングの方が利回りが高いということになれば、空き家が減って、コインパーキングが増えるなんてことになり兼ねません。

法定外新税には大変期待したいところですが、導入には、課題が解消が不可欠です。行財政局の答弁を聞いていると導入前提で議論を進めていることが懸念です。引き続き、議論して参ります。