5月市会の補正予算では、伝統産業の海外展開支援として市場調査費が1,700万円計上されました。

 一方で、現場の課題は深刻です。伝統産業は「伝産法」によって技法や原材料が厳格に規定される中、市場競争に晒されています。本来、環境変化に適応することが生存の前提であるにもかかわらず、その自由度が大きく制約されています。

 それでも一部の事業者は、海外展開や新領域への応用など、自ら道を切り拓いています。こうした挑戦を行政が支援すること自体は重要です。しかし、行政側の課題は、これまでの支援の蓄積が見えないことです。過去の取り組みや市場動向について問うても、具体的な知見が出てきません。これでは支援が単発で終わり、政策としての再現性が担保されません。

 なお、「市場競争で淘汰されるなら支援は不要」という極端な意見もありますが、私はそうは考えません。伝統産業は京都の都市価値そのものを構成する重要な基盤だからです。

 今後必要なのは大きく3点です。

 1つは、「伝産法」の見直しです。江戸時代末期から引き継いでいる技法・原材料でないと伝産品として認めないという要件を一定程度柔軟化し、時代に応じた進化の余地を確保することです。

 もう1つは、「産業」と「文化」の整理です。市場で競争する製品群と、文化として保護すべき製品群を明確に分け、それぞれに適した支援を行うことです。

 最後に、「知見」の蓄積です。海外・国内問わず、国ごと・地域ごと・年齢ごとなどセグメントを区切ったマーケット状況の把握、商品群ごとに業界全体で使える販路の開拓など、再現性のある「知見」が必要です。

 伝統産業を本気で残していくためには、「制度」と「知見」の質を高めることが肝要です。