敬老乗車証制度は、一連の財政危機に対する行財政改革の前からずっと見直しの議論が出ておりましたが、先送りを続けてきて、結局、このタイミングで見直しを真剣にすることになりました。

京都市から出てきた原案にいくつか大きな課題がありましたので、京都党と維新の会は共同で修正案を提出しましたが、残念ながら他党の賛同を得られずに否決となりました。

京都市の原案には、自民党・公明党・民主市民フォーラムが賛成して可決したわけですが、京都党としては修正案にすべしということで原案に反対をしていますが、敬老乗車証の見直し自体は前に進めるべきというスタンスです。

共産党は、基本的に現状の制度を維持すべしというスタンスで修正案を出し、原案に反対されていますが、ここは大きなスタンスの差があります。

先ず、原案の課題とそれに対する京都党・維新の会の修正案についてです。

———————————————————–

  <京都市原案>

・所得に応じて利用者負担の金額が変わる応能負担を引き継ぐ

・応能負担における利用者負担をこれまでの3倍に引き上げる

 従前が年間3,000円~15,000円だったものが、9,000円~45,000円に

 (所得400万円~700万円の方は4.5倍)

・所得700万円以上の市民は交付対象から外す

・交付対象者年齢を70歳以上から75歳以上に引き上げる

・年間パスではなく、回数券方式も導入(年間48回乗車が上限)

———————————————————–

  <京都党・維新の会修正案>

・応能負担から、利用実態に合わせて利用者負担を決める応益負担に転換する

・利用者負担は一律29,440円(子どもの通学定期の半額)

・所得制限は設けない

・交付対象年齢を70歳のまま維持する

・回数券は年間96回を上限とする

・財政効果が原案より5億円大きい

———————————————————–

京都市の原案の最大の課題は、最も利用者の多い70歳~74歳の市民が制度の対象外になることです。敬老乗車証は、高齢者の社会参加や外出を促し、健康寿命を延伸することが大きな目的なわけですから、足腰がしっかりしている70歳~74歳の時から利用していただくことは大変重要です。健康寿命の延伸は、市民幸福度の向上はもちろん、医療・介護予算の抑制にも寄与します。したがって、現行の70歳から交付する中で制度を持続可能な設計にすることが肝要です。また、限られた条件の中で、高齢者の皆様に生活スタイルに合わせて選択いただけるよう、回数券は上限を原案の倍にし、週1回は往復で使える設計になっています。

次に利用者負担金額です。京都党・維新の会の修正案は高すぎるというご批判もいただきます。しかし、果たしてそうでしょうか。敬老乗車証というのは、全国どこでもある制度ではありません。むしろ減少傾向にあり、既に廃止している自治体も多くあります。

そして、年金を筆頭に、シルバー世代と現役世代・子育て世代との世代間格差は極めて大きくなっています。加えて、現役世代・子育て世代の所得がどんどん下がり、子どもを産み育てるのに経済的に大変苦労したり、経済的な理由で諦めたりする方も多くいます。

年間29,440円は月になおすと2,453円です。1回の乗車が230円ですから約10回分の料金で乗り放題ということです。家計の苦しい世帯でも、同じサービスの定期券を買うとなると、現役世代・子育て世代の大人はこの4倍の値段、子どもでもこの2倍の値段が掛かります。

生活の苦しい高齢者の方もたくさんおられますので、29,440円が安いとは言いませんが、現役世代・子育て世代の大人、そして子ども達との負担の差についても是非考えていただきたいと思います。

さらに、京都市が借金を続けて制度を維持すれば、それは次世代である子ども達がさらに負担することとなります。修正案は、原案より年間5億円の財政効果が大きいことも最後に申し述べておきます。

私としては、修正案ではなく原案が可決したことは不本意ですが、いずれにしても、市民の皆様には「利用者負担増」だけをご批判されるのではなく、現役世代・子育て世代、そして次世代の子どもたちとの負担分担についてもご理解いただければと思います。

修正案の原文はこちら