京都市の観光は好調で、平成28年の外国人宿泊客数は318万人にのぼり、目標であった300万人を5年前倒しで達成しました。また、観光消費額も28年の実績で1兆862億円となり目標の1兆円を4年前倒しで達成しました。

 一方で、観光客の集中と混雑、市バスの車内混雑、道路の渋滞、民泊問題、観光客のマナー違反など市民生活への影響が大きくなり過ぎ、市民の中でも観光客への不満の声が大きくなっています。京都党が実施した市民アンケートでは、「観光客が増えていることについてどのように感じているか?」という質問については、62%の方が、「とても良い」「良い」と回答いただいているものの、「今後も観光客を増加させるべきと思うか?」という質問については、「現状維持」と答えた方が44%と一番多く、「減らすべき」が12%で、「もうこれ以上増えて欲しくない」という方が全体の56%を占め、半分を超えています。

 また、観光の最大の果実である経済効果に関しては、上記の通り観光消費額が1兆円を超え、着実に京都経済への好影響があるのは事実ですが、実感が伴うかというとなかなかそこにまでは至っていません。しかし、多くの方が見落としがちですが、今の観光客が来なくなった時に、どれほどのマイナスの経済効果があるかという点です。プラスの実感は伴いにくいですが、マイナスの実感は大きなものがあります。総務省の公表している数字では、定住人口1人の年間消費額と外国人観光客10人の観光消費額が同等という試算になっています。つまり、京都市は318万人の外国人宿泊客を受けれいれることで、約30万人分の定住人口と同じ経済的恩恵を受けているわけです。京都市の人口が147万人ですから、約2割の人口分の経済的底上げがあるということになります。

 そこで、京都市も「市民生活と観光の調和」を最優先に、観光客数増を追い求める「量」の追求から、一人当たりの観光消費額の向上やリピート客の獲得(満足度の向上)を求める「質」の向上軸足を移し始めております。リピート客は相対的に市民生活への負担が少ないですし、観光客数の伸びを抑制しながら観光消費額を伸ばすには単価を上げるというのは妥当な戦略と言えます。具体的には、先ず観光消費額の目標金額が1兆円から1兆3,000億円に引き上げられました。その方策としては、1つが延べ宿泊客数の増加です。つまり、同じお客さんに少しでも長く滞在してもらうということです。現在平均が1.98泊であるところを3泊してもらうことを目指します。もう1つは、それに紐づいて、もう1ヶ所多く観光してもらい、もう1食京都の飲食店で食べてもらい、もう1個京都のお土産を買ってもらうということです。引き続き、市民の日常生活への影響を減らしながら、観光の経済的恩恵が最大化されるように、行政とともに知恵を出しながら進めていきたいと思います。