学校の校舎がきれいで、安全であることは大切です。しかし、限られた財源の中で、道路や橋梁などのインフラ、そして教員の配置や学習支援といった教育のソフト施策とのバランスは取れているのでしょうか。
京都市の公会計資料を手掛かりに、その予算配分について考えてみます。
統一的な基準による公会計には、「行政目的別資産割合」という指標があります。自治体が保有する土地や建物、工作物などの有形固定資産を用途ごとに分類し、資産額の構成比を示すものです。
分類は、「生活インフラ・国土保全」「教育」「福祉」「環境衛生」「産業振興」「消防」「総務」の7分野。このうち大きな割合を占めるのが、道路・橋梁・公園・公営住宅などの「生活インフラ・国土保全」と、学校・図書館・体育館などの「教育」です。
政令市の平均では、「生活インフラ・国土保全」が60.9%、「教育」が20.0%。これに対し、京都市はそれぞれ48.8%、32.5%となっています。京都市は、他都市平均に比べて「教育」が12.5ポイント高く、「生活インフラ・国土保全」が12.1ポイント低い。教育の割合は、平均の約1.6倍です。
もちろん、資産の割合だけで、教育への投資が過剰なのか、生活インフラへの投資が不足しているのかを断定することはできません。それでも、資産構成にこれほどの違いがある以上、その理由と予算配分の妥当性を検証する必要があります。
そこで、別の指標も見てみます。
京都市の「市民1人当たりの減価償却対象資産簿価」は、政令市の中で最も高くなっています。人口当たりの資産簿価が高いうえに、教育分野の構成比も大きい。この点は、教育施設への投資や保有規模が適切なのかを検証する、重要な手掛かりになります。
実際、過去10年間だけでも、高校3校、小中学校7校で校舎が新設されています。また、番組小学校から続く歴史的な経緯もあり、閉校後も教育施設として保有されている旧学校施設があります。こうした校舎の新設や施設の保有が、教育分野の資産割合を押し上げている可能性があります。
さらに、行財政局の答弁からは、京都市の学校施設は他都市よりも減価償却率が低く、新しい資産の価値が高く残っていることが分かりました。一方、道路・橋梁・トンネルは、他都市よりも減価償却率が高く、簿価が低くなっています。 つまり、学校をはじめとする教育資産への新規投資が進む一方で、道路や橋梁などの生活インフラ資産の更新・改修が進んでいないことが示唆されています。
問うべきなのは、教育への投資の是非ではなく、そのバランスです。
安全できれいな校舎を整備することの大切さを踏まえたうえで、限られた財源をどう配分するかを考えなければなりません。道路や橋梁などの維持・更新とのバランスは取れているのか。学校施設の整備規模や仕様は、将来の児童生徒数に照らして適切なのか。学校跡地も含め、保有する資産を十分に活用できているのか。
そして、同じ予算を、教員の配置、学習支援、不登校支援など、教育のソフト施策に充てた場合と比べて、どのような効果があるのか。
評価すべきなのは、「新しい校舎をつくった」という成果だけではありません。限られた財源で、子どもたちの学びと市民生活をどれだけ充実させられたか、ということです。その観点から、京都市の教育のハードへの投資と、生活インフラへの予算配分を引き続き検証していきたいと思います。


