家庭などで出されたゴミはクリーンセンターで燃やすわけですが、最後に焼却灰が残ります。京都市の場合、この焼却灰を東部山間地域にある最終処分場に埋め立てています。しかし、埋め立ては場所に限りがあり、あと数十年で満杯になるという状況です。元々は15年で満杯になるという計算でしたが、リデュースやリユースなどを推進し、ゴミの減量に全市で取り組むことで50年まで延命できる計算になりました。満杯になったら、他の所で処分すれば良いと思われるかもしれませんが、京都にはもう他に候補地がありません。市内で処分するのはここが最後というのが現実です。

さて、当然この貴重な最終処分場を少しでも長く使える様、様々な議論がなされ、一つの事業を実行することになりました。それが、焼却灰溶融施設の整備です。これは焼却灰を1200℃の高温で溶かすことで、灰の体積を減らすことができる施設であり、さらに約20年の延命ができるというものです。

京都市は、平成17年に住友重機械工業に114億円で発注し、平成22年5月には完成・引き渡し予定でした。しかし、引き渡しの直前の試運転で基準値を大幅に超えるダイオキシンが検出されました。そこで、住友重機械工業は、引き渡しの延長を京都市に申し入れ、1日約200万円の遅延損害金を払うことになりました。

その後も度重なるトラブルにより、引き渡しの目途がつかない状況が続きます。京都市は25年8月を引き渡し期限とするよう求め、直前の6月に試運転をすると再びトラブル。引き渡しが困難と判断し、京都市は契約解除を申し出るとともに、工事代金や維持費など202億円を損害賠償請求しました。住友重機械工業側はこれを拒否した上で請負金額の114億円のうち未払い14億円を京都市に請求。

しかし、裁判では、京都市の訴えが棄却され、契約解除が認められない上「完成始動しなければ、社会経済上の損失が大きい」と溶融施設の完成を求めました。京都市は、控訴する方針です。

これまでの経緯を考えると技術的にも完成できるかはかなり怪しい。今後の裁判の動向によっては、京都市は100億円単位の大きな損失を出し、また最終処分場の延命も振り出しに戻る可能性があるという状況です。