以前より、市庁舎整備基金の流用や臨時財政対策債の返済原資の流用など、京都市の緩い財政規律については書いて参りました。財政難を言い訳にルールやルールの運用が緩いのです。

地方自治体には、財政調整基金という基金がございます。これは、自治体が財源に余裕がある年に積み立て、不足する年に取り崩すことで財源を調整し、計画的な財政運営を行うための貯金です。各年度で余った剰余金の半額以上を積み立てることが決められております。

京都市の財政調整基金の年度末残高は、H24年10億円、H25年21億円、H26年5億円、H27年13億円。京都市はここ数年実質収支が20億円前後ですので、毎年約10億円の積立をしております。しかし、残高が増えないのはなぜでしょうか。

1つは、災害への対応です。台風による水害に対する支出があり、大きな取り崩しがありました。これは、正規の取り崩しと言えます。もう1つの理由は、補正予算を組む際に財源として少しずつ切り崩していることです。

さて、京都市の財政調整基金条例を確認すると下記の記載がありました。
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(基金の管理及び処分等)
第5条 基金から生ずる収益の処理及び基金の管理並びに基金の処分については,法令に定める場合を除くほか,必要な事項は,市長が定める。
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つまりは、市長が決めれば、どんな用途に使ってもよいということが条例で定められているわけです。そういう意味では、この基金の運用は条例通りで問題ないわけです。

しかし、政令指定都市の他都市に目を向けてみると、見え方が変わります。
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(処 分)
第5条 基金は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、これを処分することができる。

(1)経済事情の著しい変動等により財源が著しく不足する場合において、当該不足額を埋めるための財源に充てるとき
(2)災害により生じた経費の財源又は災害により生じた減収を埋めるための財源に充てるとき
(3)緊急に実施することが必要となった大規模な土木その他の建設事業の経費その他必要やむを得ない理由により生じた経費の財源に充てるとき
(4)長期にわたる財源の育成のためにする財産の取得等のための経費の財源に充てるとき
(5)償還期限を繰り上げて行う大阪市公債の償還の財源に充てるとき
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これは、同じ関西の大阪市の財政調整基金条例の文言です。神戸市でも横浜市でも福岡市でも、政令市であれば、ほとんどがこれと同じような記載です。

他都市の文言をみれば伝わるかと思いますが、財政調整基金は単なる財源不足で取り崩すものではなく、地震等の災害やリーマンショックのような経済危機、借金の繰上返済などに用途を限定し、突発的な財政難に備えるものなのです。

京都市の行財政局は、京都市は財政が厳しいから柔軟に運用できるルールにしているという回答でした。そうではないでしょう。ルールが甘いから財政が厳しくなったんだと反省しなければいけない。