京都市の観光が好調です。平成27年は観光客数5,684万人、宿泊客数1,362万人、外国人宿泊客数316万人、観光消費額9,704億円でいずれも過去最高となりました。京都は、大阪等の近郊に泊っての日帰り旅行が大半で観光消費が伸びにくいという課題がありましたが解消傾向となっています。ちなみに、宿泊客は日帰り客の約3倍の経済効果があります。

外国人宿泊数は、まさに鰻のぼり。東日本大震災のあったH23年に52万人だったのが、H26年183万人、H27年316万人。欧米やオーストラリアの方も増加傾向ですが、台湾と中国の人の数の伸びが群を抜いています。H23年がそれぞれ10万人前後だったのが今はそれぞれ70万人前後となりここ数年で約7倍です。外国人宿泊客は経済効果も大きいため、観光消費額の9,704億円というのは前年比でプラス2,078億円という非常に大きな伸びとなっています。

観光地で大きなネックになるのが繁忙期と閑散期のギャップです。こちらも、観光客が最も多かった月と最も少なかった月の差が、H15年と比較して3.6倍から1.4倍に縮小し、平準化が進んでおります。これは、閑散期にイベント行うなどMICE戦略の賜物と言えます。

概ね好調と言える京都の観光ですが、いくつかの課題もあります。

1つは、ニュースでもありますが、「混雑しすぎ」で日本人観光客の満足度が下がっていること。伏見稲荷が話題に上がり、人が殺到していることは有名ですが、京都内での観光客の分散が必要です。
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20160904000009

もう1つは、観光消費の経済効果が京都で最大化されていないこと。例えば、中国やアジア系の方が爆買いする商品は、量販店等に置いてある商品が多く、MADE IN KYOYOでない物がほとんとです。買ってもらった利益のうち小売分の利益は京都におちても、製造分の利益は京都におちていません。これは、リーズナブルなお土産なんかだとMADE IN CHAINAも多く、利益が海外に流れているケースもあります。京都産の商品がもっと売れる仕組みが必要です。

そして、最も大きな課題が、住んでいる市民との利害対立です。京都市は集合住宅の民泊を認めない方針を出すなどの対策が講じられていますが、ゲストハウスや違法な民泊での外国人観光客のマナーの問題を筆頭に、観光バスの路上駐停車、四条通り歩道拡幅等と相まっての交通渋滞、社寺や祇園でのマナーに関わるトラブルなど、多くの摩擦が発生しています。観光により市民が享受している経済的メリットを知って頂くとともにトラブルや摩擦の解消も必要です。

観光は裾野が広く京都産業において非常に大きな価値があります。しかし、経済効果で言えば、定住者1人=外国人観光客11人=国内旅行客(宿泊)26人=国内旅行客(日帰り)81人という数字が出ていますから、定住者を増やすことが最も大切です。住民と観光客の利害のバランスをしっかり取るとともに、定住者促進の一番の要である雇用拡大と所得向上をしっかりと進めていく必要があります。