京都市が導入を目指す市バスの「市民優先価格」は、市民運賃を200円、市民以外を350〜400円程度とする、全国初の二重運賃制度です。観光客の集中により、一部路線・時間帯では混雑や遅延が続き、市民の日常の移動にも支障が生じています。京都市は令和9年度中の実施を目指しています。

 交通局は、市民運賃200円を、現在の230円から単純に30円値下げするものではないと説明します。人件費・物価の上昇やオーバーツーリズム対策の経費を踏まえ、本来は運賃値上げが必要な状況から、市民については「30円+値上げ相当分」を実質的に割り引く考え方です。市民かどうかは、マイナンバーカードと交通系ICカードなどの決済手段を事前に紐づけ、支払い時に自動判定する方式が想定されています。

 第一の課題は、二重価格が市バス車内の混雑改善に直結するとは限らないことです。混雑は特定の観光路線、停留所、時間帯に集中しており、運賃差だけで大きく緩和されるとは考えにくい。市民からも「値下げはありがたいが、それ以上に混雑を何とかしてほしい」との声が多く届いています。

 第二は公平性です。通勤・通学・通院・買い物などで京都市を生活圏とする市外在住者まで、一律に「市民以外」として高い運賃を負担する仕組みには慎重な検討が必要です。定期券は据え置きとし、頻繁に利用する市外在住者への負担軽減も検討されていますが、具体的な線引きはこれからです。

 第三は、マイナンバーカードやICカードを前提とする点です。未保有者やデジタル手続きに不慣れな人が、市民でありながら優先価格を利用できないおそれがあります。

 市民優先価格は、単なる運賃改定ではありません。観光と市民生活の摩擦をどう調整し、公共交通を誰のために、どのように支えるのかを問う制度です。市民負担の軽減や観光の恩恵の可視化という問題意識には理解できる面があります。しかし、公平性、混雑対策としての実効性、利用上の壁、「市民以外」の多様な生活実態を踏まえると、現時点の制度案にはなお多くの検討課題が残されています。