京都市は、毎年財源不足を「特別の財源対策」と呼ばれる禁じ手で負担の先送りをしています。そのうちの1つが「公債償還基金の取崩し」で、市債を返済するために積立を義務付けられている基金から、拝借を繰り返してきたわけです。このままいくと、この基金が7年後には枯渇するので、市債を償還できなくなり、財政破綻してしまうということで大問題になっているわけです。
実は、「公債償還基金の取崩し」にばかりスポットが当たっていますが、もう1つの行われている「特別の財源対策」が「赤字地方債の発行」です。
地方債というのは、道路などのインフラや建物の整備をする際に、これらは長く使うものなので、地方債を発行して、将来世代にも負担してもらうというのが本来の趣旨です。だから、基本的には、工事をする時にしか発行ができないし、赤字を穴埋めする「赤字地方債の発行」は想定されていません。
しかし、そんな中、京都市は抜け穴的に発行ができる「行政改革推進債」「調整債」という二種類の「事実上の赤字地方債※」を「特別の財源対策」として発行し続けています。なお、「行政改革推進債」を発行している自治体は全国でもほとんどなく、「調整債」に至っては京都市以外どこの自治体も発行していません。京都市がこれまでに発行してきた「赤字地方債」は令和元年までの決算ベースで累計227億円にものぼります。
そして、今回公表されている「行財政改革計画」では、令和3年度から令和15年度の13年間、毎年70億円の「赤字地方債の発行」が計画として組み込まれているのです。確かに「公債償還基金の取崩し」からの脱却は明言したのですが、「赤字地方債の発行」は、実はこれまで以上にしようとしているわけです。
令和3年度から令和15年度までで計算すると今後累計で910億円の新規発行をすることとなり、令和2年度分と上記の令和元年決算までの227億円を合計すると約1,200億円にもなります。地方債は30年償還ですので、毎年40億円もの返済負担が近未来に生じるわけです。毎年40億円というのは結構大きな負担です。観光が絶好調の時の宿泊税が丸々消えてしまう規模感であり、将来の財政運営にボディーブローのように効いてくるのは間違いありません。
「行財政改革計画」で財政破綻を回避すると言っていますが、本質的には破綻の先延ばしであり、将来世代に負担を先送りしている構図は何も解決していないのです。
※「行政改革推進債」は厳密な定義では、「赤字地方債」に含まれないが、「事実上の赤字地方債」