京都市が、「日本で1番人口が減った街」と聞くと、大変驚かれる方が多いのではないでしょうか?

しかし、統計上の最新データである2020年の総務省統計局の発表によると、京都市の人口は1年間で8982人減少しており、全国の約1700の市町村の中で最も人口が減った自治体となっています。内訳をみると、自然減が5,795人、社会減が3,187人です。

一方、昨年の2月市会の京プラン2025の審議において、総合企画局に人口減少に対する見解を質問しました。しかし、その答弁は大変頼りなく、具体的な数値目標もなく、人口減少が京都市に与える影響も曖昧で、「人口減少を少しでも抑制する」ということに終始するものでした。

自然増減数は、出生数と死亡数により決まりますが、京都市は政令指定都市の中でも高齢化率が高いため、死亡者数が相対的に多くなる傾向があります。そして、出生数は全国平均1.34の中、本市は1.21と全国最低水準で出生数も少なく、構造的に他都市より自然減が多くなる俎上あります。

社会増減数は、転入数と転出数により決まります。2020年は、コロナ禍の影響で、大学の授業がオンライン中心になったこと等により、本来なら市内に転入してくる大学生が引っ越しをせず実家等から授業を受けるなどの特殊事情がありましたので、2020年の単年度の数字だけで判断できない側面もあります。

しかし、大学等の教育機関から卒業した若者達が就職をきっかけに他都市に出て行ってしまっていること、京都市の住宅価格を中心とした高い物価水準などを原因に20代後半から30代の世帯が、滋賀県や京都府下の自治体に出て行ってしまっていることが、京都市の社会減の主要因です。

20代、30代の流出は、今後の出生数の減少に更に拍車を掛けることとなりますので、京都市の人口動態は大変厳しい状況にあります。

ただ、京都市は全体としては人口流出傾向ですが、伏見区の羽束師・久我地域などは、人口流入が多く、西京区の桂川地域も同様です。少し遡れば、御所南学区も小中一貫教育のモデル校の創設により子育て世代が大変流入した事例です。これらを考えるに、京都市が戦略としてターゲットすべきは、交通利便性が高いにも関わらず住宅価格、土地価格が比較的安価なエリアの開発です。具体的には、地下鉄東西線沿線の山科区・伏見区です。

例えば、山科区は山科区基本計画にも課題としてあがっていますが、まちの実態とイメージのギャップが指摘されています。ひと昔前のイメージが定着していますが、現実は、山科区は犯罪件数も他の区より少ない傾向にあり、イメージの払しょく次第で大きなポテンシャルを抱えています。他都市で見ても、一番大きな事例でいえば川崎市、関西でいうと尼崎市の一部エリアなどが同様の課題を克服して、子育て世代から人気の街へと変貌を遂げています。

東西線沿線の山科区・伏見区エリアの、駅前のマンション等の高さ規制の緩和や、小中学校や保育施設、教育施設への注力、広報戦略による街のリブランディングが今必要だと考えています。