高橋洋一さんが、京都市の財政問題についてのコラムを書いておられます。

京都市の財政がヤバすぎる問題…筆者が見つけた「最大の問題点」

内容を要約すると、下記の2つの内容になります。

①京都市のバランスシートを見ると資産が負債より多いから財政破綻は煽り過ぎ

②減債基金(公債償還基金)はそもそも必要がない

この記事を読んで、「京都市大丈夫じゃないか」と思っておられる方もいるようなので、そうではないんだということを改めて説明したいと思います。

令和元年度末の京都市の連結会計のバランスシートを見てみましょう。

負債金額2兆8,000億円に対して、資産金額4兆8,063億円であり、確かに資産が負債を上回っています。

しかし、内訳を確認するとに流動負債は2,201億円対し、流動資産が1,323億円しかありません。流動負債というのは来年度中に支払わないといけない負債で、流動資産は来年度中に現金にできる資産です。つまり、すぐ支払わないといけないお金とすぐに支払えるお金ということになります。

企業でも、黒字倒産という言葉があるように、仮にいくら儲かっていても、目の前の支払いができなくなれば、つまり資金繰りがまわらなくなれば倒産します。

後にも詳細を記載しますが、自治体は国と違い自由に市債が発行できないので、資金繰りが足りないからどんどん借金をするということはできません、京都市のように流動負債が流動資産の1.66倍もあれば、資金繰りに窮するのは自明の理です。高橋洋一さんの指摘には、この資金繰りに関する認識が抜けています。

もう1点は、自治体の資産(固定資産)には、道路や橋梁などをはじめとするインフラ資産が多く含まれています。これらは、現金化することができません。企業であれば、固定資産に投資すれば、その分、売上を増やして投資を回収するわけですが、自治体のインフラ資産は、税収で回収することを目的にしてませんので、資産金額の元をとるような収益は発生しません。

自治体のバランスシートを見る際に、多くの人が誤解しているのがこの点です。京都市は、全財産4兆8,063億円のうち約44%の2兆1,250億円がインフラ資産で占めています。

次に、減債基金(公債償還基金)が不要だという議論です。

MMT理論(現代貨幣理論)を肯定する学者や政治家が、緊縮財政に反対をし、国債の日銀引き受けを行って(どんどん借金をして)財政出動をすべしという主張をします。この是非については、それぞれ意見があるかと思いますが、自治体の場合は別の理由でどんどん借金をすることはできません。(通貨発行権がないというのもありますが、それは今回はおいておきます)

国は、赤字国債の発行が事実上認められており、財源が足りなくなったら赤字国債を発行して資金繰りをまわせます。しかし、自治体は赤字地方債の発行が原則禁止されています。そのため、京都市は抜け穴的な特例のものだけを発行しているわけですが、これらもルールがあり、無条件に発行できるわけではありません。従って、金額的にも限界があります。自治体は国のように自由に借金できないルールなのです。

減債基金(公債償還基金)というのは、市債は30年後に満期一括償還の条件で発行しているので、毎年の返済分(つまり額面の1/30)を内部で積み立てている基金です。これをしないと、30年後にいきなり満額の現金が用意できないからです。

減債基金などに積み立てなくても借換をしたら良いという言うのですが、それは、償還時に自由に借換の市債を発行できてはじめて成り立ちます。残念ながら、自治体では元々の償還期限を超える借換は認められていません。減債基金の残高がなく、満額償還の現金を用意できなければ、それはすなわち財政破綻となります。

恐らく、国の財政運営ルールを念頭に記事を書いておられるのだと思いますが、現行の自治体に適用されるルールでは、全く通用しません。京都市の財政危機が煽りだというのは、全くの見当違いですので、ご注意ください。