自民党総裁選に出馬表明している岸田文雄氏と高市早苗氏が揃って、金融所得課税の見直しを打ち出しています。ネットでは批判の声も一部あるようですが、私は大賛成です。

日本では、株式の売買による譲渡益や株式の配当に対する税金は、申告分離課税で20%となっています。申告分離課税というのは、他にどんな収入があるかは関係なく、一律で20%の税率ということです。

一方、事業所得や給与所得など労働の収入に対しては、累進課税で所得が上がるほど高くなり、最大で55%にもなります。

労働所得の税率が最大55%に対して、不労所得の税率が20%というのは、バランスが悪すぎます。

また、近年ではトマ・ピケティが指摘しているように、「資産が生み出す利益率」が「経済成長率」より大きくなっており、既に資産を多く持っている資本家と労働によって資産をこれから築こうとする一般の人との格差は拡がり続けます。

このように、放っておいても格差が拡大する環境にも関わらず、資産から生まれる金融所得より労働所得の方が、税金も高いとなると、この傾向に更に拍車をかけていることになります。

従って、金融所得の税率を一定上げることは、格差縮小のためにも必要な対応です。

懸念されるのは、投資などが減退するという側面ですが、海外の実態を見れば、問題ないと考えます。図表の通り、株式の譲渡所得に対する課税も配当所得に対する課税も、先進各国は日本より税率が高いのが現実です。

増税という側面が気になるのであれば、その財源分の労働所得に対する所得税を下げることや、福祉政策で低所得者に還元するような施策とセットにして所得の再分配をするなど、選択肢はいくらでもあります。

増税という言葉だけに引っ張られずに、格差縮小の側面を是非知って頂きたいと思います。